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事業承継税制の落とし穴!?-相続人の数や財産評価額によっては効果なし-

「事業承継税制」は、経営承継円滑化法に基づく認定のもと、会社や個人事業の後継者が取得した一定の資産について、贈与税や相続税の納税を猶予する制度です。この事業承継税制には、会社の株式等を対象とする「法人版事業承継税制」と、個人事業者の事業用資産を対象とする「個人版事業承継税制」がありますが、単純に株式評価額(事業用財産)に見合う相続税の納税猶予が受けられるわけではないので、注意が必要です。

 

 <例>

前提条件:非上場株式3,000万円+その他の財産7,000万円=計1億円

◆相続人:子(後継者)のみ

◆取得財産:全て後継者が取得

◆事業承継税制の適用を受ける場合

 

・相続税額全体の計算

1億円(課税価格)3,600万円(基礎控除額)6,400万円

相続税の税率は金額ごとに決められており、今回の1億円以下の場合は30%となるため、

6,400万円×30%700万円=1,220万円

 

・納税猶予額の計算

3,000万円(株式評価額)3,600万円(基礎控除額)=△600万円 → マイナスのため、税額0円

 

・納付税額

1,220万円-0円=1,220万円

 

このような例ですと、猶予税額が0円となります。ですが、本制度の適用を受けるためには、事前に経営承継円滑化法に基づく都道府県知事の「認定」を受ける必要がありますので、猶予税額が0円になる場合は、都道府県の認定を受けるために要した時間と費用が全く無駄になってしまうという事態も考えられるということです。

 

今回の例で、猶予税額が0円となったのは株式評価額が基礎控除より低かったことが要因であり、これは「個人版事業承継税制」でも同じことが言えます。


事業承継税制の適用に当たっては、事前に最終的な納税猶予の効果を十分に検討しておくことが重要であり、単純に株式評価額による計算のみでなく、相続財産全体を把握したうえでどれだけの効果が得られるかをシミュレーションし、制度の適用を受けるかどうか決断することが求められていると思います。




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 2023年1月発行 NTSVoice24